レンチキュラーデータの作成用ソフトを自作し、自作シール用に使っていたのですが、このまま腐らせるのもなんだし公開を、と考えています。
→公開しました。
その時の仕様説明用に、レンチキュラーの基本概念を記述しておこうと思います。
素人なので、間違えていたら突っ込んでくださるとありがたいです。
レンチキュラーを使用する意味
レンチキュラーの利点は、いくつもの絵を一つの場所に重ねて配置でき、見る角度によって見る絵を変えられる点にあります。
これをうまく利用して、
■ 全く違う絵を2枚配置 → 絵のチェンジング
■ 少しずつ違う絵をたくさん配置 → アニメーション
■ 左右の視野で少し違う絵をみせる → 立体視させて3Dのように感じさせる
等の効果を演出可能です。(複数の組み合わせも可能)
レンチキュラーの仕組み
レンチキュラーシートは、かまぼこ型がいくつも連なっているような形で作られています。
かまぼこの中心で白と黒が分かれるような縞模様を配置した場合、視点の位置によって、黒いシートにみえたり白いシートに見えたりします。
つまり、見る方向によって見える絵が変わってくる、ということです。
上の例では単純な黒と白だけですが、2枚の絵をレンチキュラーの幅に刻み、それを2分の1の幅に圧縮し、交互にきれいに並べることで、チェンジングのレンチキュラーの元絵となります。
(レンズの効果で、圧縮された絵は表示されるときにレンチキュラーの幅に引き伸ばされます)
レンチキュラーシートのスペック
レンチキュラーを買おうとすると、スペック表にはLPI、視野角といった単語が 出てきます。
LPIとはline per inchの略で、要はかまぼこの幅の細かさを表し、数字が大きいほど幅は狭くなります。
(line per inch=1インチに何本のかまぼこがあるか。60LPI:1インチに60本のかまぼこがある)
視野角とは、絵の切り替わりサイクルの角度で、レンチキュラーを横に動かしたとき、広いほどゆっくり絵が切り替わり、狭いほどすぐに切り替わる、という特徴を持ちます。
狭い=左右の目でも見える絵が変わってくるため、その差を利用した3Dの作品が作りやすい。
逆に、広い場合ははっきりと絵を表示できるので、チェンジングなど2Dの作品に向いている。
さて、なぜレンチキュラーのスペックの話をしだしたかというと、下絵を自作する場合、どうしてもこのあたりの意識を避けては通れないためです。
先程のかまぼこの絵の黒い部分と白い部分、実際にはどのくらいの幅で印刷すればよいか。
100LPIのレンチキュラーの場合、1インチ=2.54cmに100本のかまぼこなので、1かまぼこ=0.0254cmであり、その半分である0.127mmが黒い部分1個分の幅となります。
これをどうやって作るかなのですが、パソコンで作る画像の単位はPixelで、mmやcmやインチではありません。
ではどうするかというと、作る作品の大きさから考えます。
たとえば、6cm四方くらいの作品を作りたいとします。
100PLIの場合、6cmに並ぶかまぼこは何本かというと、
6 ÷ 2.54 × 100 = 236.22047244094…
となります。だいたい237本くらいのかまぼこが並んでいるわけです。
ならば、237 × 2=474Pixel四方の画像を作成し、1ピクセルごとに黒と白の縞々が等間隔にならんだ画像を作り、その画像を237×0.0254=6.0198cmの大きさで印刷すればOKです。
※ 画像を6.0198cmで印刷するには、例えばフリーソフトならInkscapeというソフトで画像を配置し、幅、Hにそれぞれ60.198(mm)を指定すればOK。
レンダリングはpixelated、横向きにしたほうが良い、という注意点もありますが、それはまた別の記事で説明しています。
プリンターの解像度の確認
前項で「6.0198cmの大きさで印刷すれば」と簡単に書きましたが、これが出来るかはプリンターの性能に依存します。
サイズを指示するだけなら、前述のようにソフトウェア上で可能です。
しかし、指定したサイズで正確に──
画像の1Pixelを0.0127cmで印刷してくれるかは、プリンターの出力可能な解像度しだいとなります。
たとえば、プリンターの解像度に300dpiと書かれていたとします。
dpiはLPIと似た意味で、dot per inch、つまり1インチに印刷できる最大ドット数を表しています。
単純に数値だけで考えると、
1ドット=2.54 ÷ 300=0.008466…
なので、十分可能なのでは、と思わせてくれます。
しかし、スペックの表示は、そのプリンタが性能を最大限に発揮できる環境で、最高級かつ最適な設定で出力した場合の内容です。
紙の種類やインク状態など、最適な環境を揃えるのは意外と難しかったりします。
正直な話、こればかりは自分の環境で色々テストし、最適な設定を見つけるしかありません。
また、最適な設定を見つけたとしても、絵によってはインクの滲みが影響して、うまくいかない場合もあります。
ひたすら試行するのみとなってしまうのです。
※ この『印刷機依存』という点についての説明が面倒だったため、シール作成当時に使用していたレンチキュラー用の自作ソフト公開をずっと見送っていました。
ひとまず、ここまでがレンチキュラー作成に必要な一通りの概念となります。
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